書評『うおつか流あぶないニッポンで安全に暮らすためのヒント100』

 本ブログではまだ一冊しか書評を書いていないが、実際は十冊以上読んでいる魚柄仁之助さん。今回取り上げる『うおつか流あぶないニッポンで安全に暮らすためのヒント100』もまた、以前取り上げた本と同じく食文化(だけ)を扱ったのではない変わり種の本。安全大国だと言われる日本だが、なんだかこの頃様子がおかしい。実はあぶないことだらけなんじゃないのか? という考え方から魚柄さんによる安全に暮らすためのヒントが見開き二ページの構成で百つ書かれている。

欲ボケしている日本人に対する警鐘

 本書の核心は「欲ボケ」している現代に生きる日本人に対する警鐘。とにかくこれが一番のテーマだ。詐欺や株——ちょうど本書の出版当時はライブドアや村上ファンドなどホットな話題があった——で騙された人間が「善良な市民を騙すなんて」と言うが、「欲に目がくらんだ騙された側も十分悪い!」と説く。
 これ、とても良くわかる。なんといっても自分の周り(親族)にそういう欲に目がくらんで失敗した人間がいるんだもの。本当に馬鹿な人間だと思っている。もう少し真っ当に自分の仕事だけでやっていたら今頃もっとまともな生活をできていただろうと考えると、情けなくなる。

 あとだ。言っちゃあ悪いが世の中のお年寄りたちはあまりにのほほんと呑気に生きすぎてる気がする。以前高校の軽音部で楽器指導の仕事をしていた時、市営バスに乗って通っていたんだけど、乗車中必ず一回は「息子さんやお孫さんから電話番号が変わって電話がありましたら、それは振込詐欺です。すぐに警察に連絡しましょう」だなんて車内放送を聞かされていた。
 これ非常にうざったい。親族の電話番号変更イコール詐欺、だなんてあまりに短絡的だし、ここまでして噛み砕かなきゃ理解できない老人というのもあまりに悲しすぎる。
 きっと「昔はこうじゃなかった」だの「世知辛い世の中」だの言うのだろうけど、こんな時代にまで長生きしてしまったんだから文句は言うなって言いたくなる。
 
 そういう意味で、本書のあとがきに書いてあるように、ことごとく小心者で疑い深い人間の生き方を、もう少し見習っていくのも必要だ。ただし疲れるけど。だからこそ、この人こそは100%信頼できる人間を見つけられたら幸せなんだろう。(言うまでもなく、そういう人とは儲け話を一切しない関係で)

ちなみにこのような話題になると「性善説」や「性悪説」といった言葉が持ち出されるが、どちらも「全ての人間を善人だと思いましょう」だとか「悪人だと思いましょう」といった、そんな単純な説ではない。

食はもちろん、お金や商売のことも

 本書は項目ごとにヒントが書かれている。言うまでもなく最初の章にあたる食の項目が一番内容も充実していて、深い。ちょうどBSEの牛肉の問題が大きく騒がれていた頃の本だけあってBSEに関した話題も多い。かつてイギリスでBSEが大流行して何十万頭という牛が焼却された際、北朝鮮がそれを引き取ろうとしたらしいが、なんともまあ恐ろしい話である。(53頁)

 また食に関する話だけでなく古道具屋を長らくやっていた魚柄さんだけあってお金と商売に関する章もなかなかタメになる話が書かれている。起業したい人に対する注意事項など流石は長らく自分の店をやっていただけの説得力がある。食文化の本からは感じ難い、彼のビジネス感覚の強さやシビアさが垣間見れる。

終わりに

 全体としてはマナーやモラルについてなど説教くさい印象もあるが、今時なかなかうるさい人間ってのもいないのだ。だから説教くさいことがいいのだ。貝原益軒の『養生訓』を見てみるといい。あれしてはいけない、これしてはいけないと端から端まで説教だらけなんだから。