【書評】『刑務所わず。――塀の中では言えないホントの話』

前回の記事(【書評】『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた――そしたら意外に役立った』)に引き続き、なぜ若者にホリエモンは人気なのか。ホリエモンの本を読んでその理由を探ってみるシリーズである。

今回取り上げるのは『刑務所わず。――塀の中では言えないホントの話』。もちろん、著者はホリエモンこと、堀江貴文だ。

実のことをいうと、本書については3年位前に、大学の図書館(編入前のT大学)で半分程度まで読んだことがあった。そして、未読だった後半は、釈放までのリアルタイムの日記記事(当時メルマガで配信していたのかな?)となっていて、3行ほどの日記の寄せ集めを読み通すのは、ちょっとしんどかった。日記の記事の一部が、漫画にもなって載せられているので、そこだけ読むのでもいいかもしれない。

僕のように、とりわけホリエモンのファンでもない人間からすると、前半の堀の中の事情を赤裸々に書いた部分を読み通せば、充分かなという印象だ。

ホリエモン、介護職に就く

ホリエモンが堀の中で担当していた仕事は、「介護職」。

ホリエモンが配属された作業所は、認知症の高齢者や、身体障害者が配属される場所であり、ホリエモンのような健常者の「衛生係」と呼ばれる人たちが、それらの人物の介助をする。本書の中で、彼が語っているように、いわば「住み込みの介護職」といった感じ。

この介護の様子が赤裸々に書かれているのだけれども、これがかなりえげつない。

何故か大便後に拭くのを面倒くさがる元マタギの老人。ある日の彼が製作した商品を確認すると、大便がこびりついていた話。
浴槽に大便が浮いている話。
釈放前に老衰で死ぬのが早そうな囚人の話。

などなど、かなりひどい有様の話がたくさん出てくる。

小児麻痺で自分ではほとんどなにもすることができないホリエモンと同世代のかまってちゃんの受刑者の話とか、正直読んでいて救いようのない気持ちになった。ちなみに、その彼の罪状は放火……。まあ、よく火をつけることができたものだ。

多種多様な面会者たち

誰々がきてくれた、という面会者の話もたくさん書かれている。
これがまた、この面会者たちが多種多様で、「ホリエモンってこんな人とも仲よかったのね」なんて思わず思ってしまった。例えば、乙武さんやGLAYのTERU、脳科学者の茂木さんなどなど。
あとは、もちろんドワンゴの川上氏とか、元2ちゃんねる管理人のひろゆきとか、その手の当たり前のメンツは何度も登場する。

しかし、乙武さん。実際彼のことをよく知っていたわけじゃないけど、「こんな時代だからこそ、堀江さんや橋本(橋下徹)さんのような人たちが求められているんです」なんてこと言っちゃうんだもの、ちょっと残念な気持ちになったな。

刑務所内の食事・お菓子事情やみんな気になるあの手の話

「クサイめし」だなんて、よく表現される刑務所での食事。ただ、実際は結構美味しいそうだ。曰く、「大量に作っているのと、出来立てを食べられるのもあって、美味しいときはマジでうまい!」とのこと。
後半の日記のまとめには、食べた食事のメニューも書かれているが、確かにそれを見る限り、栄養バランスもよく、普通に美味しそうだ。ご飯はやっぱり麦飯だけど、我が家のご飯だって麦飯だし、おいしく食べているし。

また、どうしても喜びが少ない刑務所ゆえ、お菓子の支給がとてもうれしいものになるらしい。お菓子の内容に一喜一憂しているホリエモンの様子が、少しかわいくも思えてくる。

あと、多くの人が気になってしまうであろう、あっちの話も赤裸々に書かれている。
例えば、ムショ内はエロ本はOKだけど、犯罪性のあるもの(ロリコン的なものや、レイプ的なものとか)はNGという話とか。
自慰行為は生理現象なので、刑務官公認。でもやるのはトイレなので、共同部屋の人は、同居人に断ってからやらなければならない話などなど……。

元受刑者の厳しい現実

軽いタッチで、面白おかしく刑務所の事情を書いた本書。
ただし、真面目に書かれた頁もあり、そのあたりはなんだか、文章から感じられる雰囲気が違う。

前述したように、ホリエモンが所属された工場は、認知症気味の高齢者や身体障害者がほとんど。
そして、彼らは出所した後の頼れる家族がいなく、施設にも入居できなかった場合は、入所中の雀の涙のような作業報酬金で身を凌ぐしかない。これは現実問題、かなり厳しいだろう。だから、出所して社会に放り出された彼らがとってしまう行動は「再犯」……。

「一度刑務所に入った人間の再犯率は5割」
これは、ホリエモンが刑務官から聞かされショックを受けた言葉だ。

そして、どうか元受刑者に対して偏見の目をもたないで欲しい。それだけで彼らの再犯率を減らすことにつながり、結果的に私達の世の中のためになると書く。

このあたりの記述に関しては、まさに体験した人物だからこそ言えることであると思うし、考えさせられる。
正直に言って、このあたりだけは、ホリエモンのことが少し好きになった。

そういえば、映画『ショーシャンクの空に』で、ブルックスというおじいさんの囚人が、50年勤めあげた刑務所を、仮釈放されたことから出ることになり、むしろパニックになってしまい暴れるシーンがある。結局その彼は、刑務所の仲間たちに説得され、シャバの世界に出ることになるのだが、やはり高齢の彼にとって、50年ぶりの社会に馴染むということは難しく、最終的に選んだ道は、自殺……。「ブルックスここにありき(Broocks was here)」という書き記しがまた、切なかったな。

このブルックスの話もまた、元受刑者の辛い現実というのを、よく表しているシーンだと思う。

終わりに

なぜ若者からホリエモンは人気を集めるのか。
またしても今回も結論を出さず終わってしまった。というより、今回は本当にただの書評記事だ。

本書に関しては、好奇の目で手にとってしまう本だと思う。実際、自分もそうだったし、それでいいと思う。
だが、読んでみると、実際に入所した人間だからこそ書ける受刑者の厳しい現実ということにも触れられているので、そのようなところにも注目してみればいいと思う。