【カネトショ】第十二話 二ヶ月半ぶりに行った美容院は変わり者のおじさんの店だった

カネトショ第一二話用アイキャッチ画像 お金がなかったので図書館で本をたくさん読んでみた

 久しぶりに髪の毛を切った。かれこれ二ヶ月半ぶりに切ったのだ。元から髪の量が多いタイプでかつくせ毛なので、二ヶ月近く放置していたら相当に重い印象であった。いささか短くなりすぎた気もするが、どうせすぐに伸びるので問題はない。サッパリしたのでいいのだ。

神奈川県某市にて

 今日は母の家に来ている。場所は神奈川県の某市。横浜よりもだいぶ田舎なところである。母の家に着くや否や、
「髪伸びたね。切ってくれば?」と言われた。
 金をくれるとのことで、願ったり叶ったりである。遅めの昼食をとった後、さっそく母にお勧めの美容院を案内してもらった。
 行く前から少し変わり者のおじさんがやっている小さな個人店だと聞いてはいたが、実際に行ってみるとなるほど確かに変わり者であった。なんだか安心してしまった。
 その店は床屋のような雰囲気も漂った、小さな美容院だった。客席は二席ほどだけであった。と言っても切るのはその例の変わり者のおじさん一人なので二席もあれば充分なのであった。
 待合用の長椅子に背負っていたリュックサックを置き、施術台に座るとすぐに、
「前髪はどうする?——横は?——後ろは?——てっぺんは?」と、質面攻めであった。
 僕が前髪はこう——横はこう——と答えると、
「よし、だいぶ決まったな」
 おじさんの脳内で仕上がりのイメージが出来上がったようであった。

髪吹雪が舞い散る

 左側の一メートルほど離れた場所には扇風機。寝違えた人間が痛みからうまく首が回せないように、不自然な首振りであった。カックンと、一瞬首を振る動作が止まるのであった。ちょうど扇風機がこちら側を向いた時に、髪が切り落とされると、ブワッと短い毛が舞った。
 同音異義語の紙吹雪は、めでたい時のものとされているが、果たして僕の髪吹雪は風情があるだろうか。汚いと言われても失礼してしまうが、綺麗だとも自分でさえ思えない。ただただ、掃除が大変でなかろうかと気になってしまった。
 店内にはAMラジオの野球中継が響き渡る。なんだか、少しだけ時代を遡ったような気持ちになった。
「いいウェーブを持っているから、だいたい一ヶ月半ってところだなァ」
 僕の癖毛だと、だいたい一ヶ月半の周期で切るのがいいと言った。なるほど確かに今までは一ヶ月半ほどで限界を感じ、頭をユサユサさせ美容院にせっせと通っていた。
「二ヶ月以上伸ばしちゃうと駄目だね。私のようになってしまう」
 灰色の自分のパーマヘアを指して、おじさんが言った。美容師がそんなこと言ってしまうのかと思いながら苦笑いを浮かべておいた。
 なかなか気に入った。また来ようと思った。


原稿は8月27日(日)に執筆。切ってから数日経ったが頭が軽くなって楽になっている。出かける際は久しぶりにワックスもつけている。洒落気バリバリである。

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