ブルース研究の楽しみ——レイジー・レスターの曲の歌詞を探った話

レイジー・レスター(Lazy lester)という人の曲に”Tell Me Pretty Baby”という曲がある。
「なあ、教えてくれよ。俺がした何がいけなかったって」なんて言う歌い出しで始まる、ブルース曲だ。

以前、ブルース愛好家で知られるスカンクちかのさんから、大量にもらったCDの中の一枚の、“Rhythm ‘n’ Bluesin’ By The Bayou – Mad Dogs, Sweet Daddies & Pretty Babies”というコンピレーションアルバムに収めれていて、お気に入りの一曲だ。あんまり泥臭くないところが良い。

参考に、YouTube動画を載せたが、僕が聴いていたバージョンは、もっとテンポが速く、歌のピッチも、も少し高めだ。残念ながら、そのバージョンはYouTubeにもSpotifyにもないので、興味があれば上のアルバムで聴いてみて欲しい。

歌詞の一節の中の、一つの単語を探る

最近、自分のバンドRONDOBELLにおいて、僕も少しずつ歌うようになった。そんなわけで、この曲を歌ってみたくもなる。

だが、いざ歌おうとして、歌詞を探してみると、ようやく見つけ出した一つの海外サイトでも、二番の歌詞の一節が、”You goin’ down to the … goin’ to the break of day”なんてある。まあ、つまり「…」の部分は聴き取り不可とのことだ。

こういうこと、ブルースなどの黒人音楽には、結構よくあることだ。
なんせ、歌っているのは、アメリカ南部出身の黒人たち。英語ネイティブにとっても、なかなか聴き取りは難しいらしく、このように一部を「不明」としている歌詞が結構あったりする。

こういう歌詞に出会った場合、選ぶ選択肢はいくつかある。

  • その一、頑張って聴き取る。
  • その二、自分で単語を埋めて、プチアレンジをする。
  • その三、いっそのこと、日本語で歌う。
  • その四、歌うのを諦める。

とはいっても、英語ネイティブが聴き取れなかったものを、非ネイティブの僕が聴き取るのは至難の技だし、自分で歌詞を埋めるのも、ありといえばありだけど、やっぱりオリジナルを知りたい。英語の曲を日本語で歌うのは、今はまだ少し抵抗がある。もちろん、潔く諦めるのはまだ早い。

不明部分がタイトルになっていた

最終的には、その歌詞の不明箇所の単語は”dream club”だと判明した。
その謎が解けた過程はあっけないもので、レイジー・レスターの“One More Once”というライブアルバムを聴いていたら、”Tell me, tell me baby, what have I done wrong?”と例のメロディが流れ出し、ハッとタイトルを見てみたらそこには、”Dream Club”の文字があったというわけだ。そして、例の不明箇所では、はっきりと”You goin’ down to the dream club goin’ to the break of day”と歌っている。

なんでこのライブ盤では、わざわざ”Dream Club”だなんて、別タイトルをつけたのはよくわからないが、こういうことも黒人音楽の世界ではよくあること。この前聴いていたクリフトン・シェニエのライブアルバムだなんて、そんな曲ばっかだった気がする。

まあ、つまり、適当なのだ。
きっと、「歌い出しがpeople keep on runningの曲」だとか、「ブリッジがhey hey heyの曲」とかいう程度の記憶で、クレジットしてしまったのだろう。

オリジナルよりも白人のカバーの方が有名

そもそもの話、この曲の歌詞を見つけるまでに至った過程も少し苦労した。
“lazy laster tell me pretty baby lyrics”なんて、Google検索してもヒットしないのだ。

結果的にいうと、白人ブルースバンドのファビュラス・サンダーバーズーかのスティーヴィー・レイ・ヴォーンの兄、ジミー・ヴォーンと、ブルースハープの名手キム・ウィルソンがやっていた凄いバンドだーが、この曲をカバーしているのをYouTubeで偶然見つけた。それで試しに、”fabulous thunderbirds tell me pretty baby lyrics”で検索したら、こちらでようやく一つのサイトがヒットしたというわけだ。

悲しいかな、ブルースの世界では、黒人のオリジナルよりも、白人のカバーの方が有名なことが常だ。
かのスティーヴィー・レイ・ヴォーンがやった”Texas Flood”は、彼のオリジナルだと思っている人も多いかもしれないが(僕自身そうだった)、オリジナルは、ラリー・デイヴィス。

エレヴィス・プレスリーがテレビに出演した際、腰をクネクネさせながらいやらしく歌い、一夜にして一大センセーションを引き起こした、”Hound Dog”のオリジナルは、黒人女性のビッグ・ママ・ソーントンのバージョンだ。

得てして、黒人のオリジナルよりも、白人のカバーの方が有名だ。
それはやっぱり、白人が歌ったものの方が売れて、金になるからだ。

だから黒人音楽は面白い

と、このように一曲のブルース曲の、歌詞の中のほんの一つの単語を探るのに苦労した話をつらつらと書いたわけだが、最後に言いたいのは、だから黒人音楽は面白いということだ。

歌手や楽曲がマニアックな分、情報は少ないし、適当な部分も多い。
またどう考えても、コードが噛み合っていなかったりと、おかしな演奏の作品もあったりする。
大当たりした白人歌手によるカバー曲のオリジナルの黒人歌人は、全然恵まれていなかったりもする。

そういうところ全部が、知れば知るほど面白くなってくるのだ。

そういえば、B.B. Kingが歌っていたバラード曲で、”Guess Who”という曲がある。
あの曲どうやら、B.B. Kingのオリジナルではなくカバーらしいが、スカンクちかのさんも、そのオリジナルは掴めていないとのこと。でも、とにかく、B.B.Kingのオリジナルでないことは確かなんだとか。

オリジナルは掴めていない。
こういうところにロマンを感じてしまう僕は、変わり者だろうか。