映画『マイケル・コリンズ』——アイルランド独立の英雄はテロリスト

 映画『マイケル・コリンズ』を観た。実をいうとこの映画、数年前の大晦日から年明けにかけて観たのだけど、4分の3くらいまで観ておいて、そのときは途中で止めちゃったのだった。というわけで、数年越しに全編を観たのである。

 この映画は題名の通り、マイケル・コリンズという人物の伝記映画である。——と言っても、マイケル・コリンズなんて、ほとんどの日本人は聞いたこともない人物だと思う。彼を一言で表すのなら、アイルランドという国をイギリスから独立させるために奮闘した英雄であり、テロリストだ。そう、英雄なのにテロリストなのである。彼は、自分たちの国の独立させるため、敵・英国側にゲリラ戦法をしかけ、また、特別捜査官たちを暗殺するよう、指令を出した。

 映画は、アイルランド独立のきっかけとなった1916年のイースター蜂起の「失敗」の場面から始まる。ダブリンの中央郵便局に立てこもっていたアイルランド義勇軍側が、イギリス軍の集中攻撃の下、降伏するのである。この時義勇軍の一兵として参加していたコリンズのセリフが印象的だ。

——「また失敗だ。ハリー」

 アイルランドの歴史は、血の繰り返し。このイースター蜂起の以前にもアイルランド独立主義者たちは幾たびもイギリス軍に対して武装蜂起・反乱を繰り返している。そして、その度に、圧倒的な戦力差ゆえ、毎度、鎮圧されたのだった。

 映画冒頭の、降伏したアイルランド義勇軍側の指導者たちは、当然の流れというべきか、すぐに軍法会議にかけられ、そのまま処刑(銃殺)される。その間、映画が始まって5分半である。映画が始まって5分半で、主人公側の指導者たちが処刑される——そう、この映画はかなり重いのである。

 だから、数年前に大部分を観た際にも、だんだん耐えきれなくなって途中でやめちゃったんだ。なぜなら、残りの上映時間でマイケル・コリンズが暗殺されてしまうのは知っていたから。これが、歴史映画を観るとき辛いところである。

 だって、これ、主人公が最期は殺されると、究極のネタバレをしているんだぜ? それを知っていて、観続けるというのは、なかなかシンドいところがあるのだ。(僕が大袈裟なのか?)

 映画『マルコムX』を観た時もそうだった。マルコムも、最期は殺される。わかってはいるけれど、なかなか観続けられない。それでいて、あっちは暗殺される直前のシーンで、サム・クックの「A Change Is Gonna Come」なんて流している。

——「長く辛い時間を過ごしたがやがて変化は訪れる、そうさきっと」

 こんな感動的な歌を流しておいて、その直後マルコムは殺されてしまう。えらく確信犯的な映画だ。

「700年待ったんだ。7分くらい待て」

 話を『マイケル・コリンズ』に戻そう。

 これは史実だからネタバレしてしまうけれど、アイルランドはついにイギリスから独立することとなる。その条件には、「イギリスに忠誠を誓うこと」「北アイルランドは再検討されるが当面は英国内にとどまること」という、受け入れ難い点はあったが、コリンズはこれを、精一杯の努力の結果として、受け入れる。彼は、たとえ納得しがたい条件であっても、まずは独立への第一歩を踏み出すことが大事だと考えたのだ。

 しかし、これに断固反対するものたちがいた。それまで独立を目指しともに戦ったエイモン・デ・ヴァレラ率いる条約反対側である。彼らは、あくまで完全独立以外、認めないと主張する。

 結果、映画の後半になると、コリンズ側とデ・ヴァレラ側とで内戦となる。——ようやく、イギリスから独立できたと思ったら、かつての仲間たちと内戦である。本当に、アイルランドの歴史は血みどろだ。

 映画のクライマックスは、アイルランド独立を承け、ダブリン城(英国によるアイルランド統治のシンボルだった)の管轄を、英国からアイルランド自由国軍へと受けわたすための式でのシーン。

 式に7分遅れたコリンズは、英国の総督からそのことをチクリと指摘されるが、「700年待ったんだ。7分くらい待ってもいいだろう」と切り返す。

 アイルランドの歴史には、長く辛い過去がある。いや、いまでもそうである。北アイルランドはいまだにイギリスのものだし、この度のイギリスのEU脱退の騒動のおかげで、また大変な事態になっている。

 いずれそういう、アイルランドの歴史や現在の事情などを書きたいとは思っているけれど、そのためには、また「勉強」が必要だ。ひとまず、アイルランド関連の本は、手元に一冊もないし、この拙文では、この辺りで勘弁を願いたい。

 まずは、こちらも途中(冒頭場面)で中断しっぱなしの『麦の穂をゆらす風』を観ようとは思っている。しかし、こちらは『マイケル・コリンズ』以上に重いんだよな……。今の僕に、観れるだろうか。


※当記事は、映画を観終えた後、酒の勢いも手伝って、自分の知っている限りの知識と、Wikipediaでそれを補完しつつ書いたので、はっきりと言っておくが、内容については保証できない。こんなことはないとは思うが、決してGoogleで検索したら引っかかったとはいえ、レポートなどの参考資料として使わないように!


※2017年2月5日現在、映画『マイケル・コリンズ』は、Amazonビデオでレンタル価格199円で観れるので、そちらがおすすめ。