バンドの集客問題について——SNS 上で話題になっていた記事に対する反論と持論展開

卒業ライブ写真。自分と永樹 音楽

今回の記事のテーマは、バンドの集客問題。
リンクを決める際に、ローマ字で”syukyaku-mondai”と打ち込んだら、一見就活問題に似ているなと思ったが、就活ではない。集客だ。

ことによっては、集客問題よりも就活問題の方が大事かもしれないが、(少なくとも今の僕にとっては大事だろう)人間、一番大事なことよりも、どうでもいいことの方が、案外書きたくなるものなのだ。これ、ひょっとして、僕だけだろうか。

空想上の理屈を挑発的なタイトルにのせて

そんなどうでもいい前置きはさておき、なんでこんな記事を書こうかと思ったかというと、2週間ちょっと前に公開されて、バンドマンたちの間で話題になった(らしい)以下の記事を読んだから。

動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか

この記事自体、アジカンのGotchさんが書いていたが、最初に公開された時から、書き直されているとのことなので、僕が読んだ時には、すでに修正後だったと思う。おおかた、ネットで瞬く間に拡散され、批判の意見もたくさん飛んできたことで、少し大人しくなったのだろう。一連の騒動を受けて、謝罪と反論を記した記事も公開している。

正直にいって、この記事の内容自体、大したことが書かれているわけではない。
曰く、集客のできないバンドがノルマを払うからダメなライブハウスがいつまでも潰れないで続く。結果、すべてのライブハウスがジリ貧に陥っている。だから、しょうもないバンドはライブ活動をやめるか、ライブの頻度を減らせ。そうすれば、質の低いライブハウスは潰れて、良質な店だけが残る。と、ただそれだけだ。

まず、彼が言っていることは、空想上の理屈すぎて、まるで現実味がない。
一体どこにこんな記事を見て、「ああ、俺らのバンド、武道館目指しているくせに、実際集客全くダメだな・・・。他のバンドやお世話になった箱に迷惑をかけないためにも、もうライブ活動を辞めてしまおう」だなんていう、バンドがいるんだろうか。そんな腰が低い(というか、弱気な)バンドは、ハナからプロなんて目指してないでしょ。

結局のところ、本人がそのあとのブログ記事で書いているが、この記事がここまでたくさんの人に読まれたのは、随分と偉そうな挑発的なタイトルだったからだろう。
「話題になることで問題提起が広まることを狙っている」だなんて、書いていたが、別にそんなんじゃないだろう。ただ、炎上させて自分と会社の名を売りたかったんじゃないの。

プロ志向かどうかなんて、店にとって重要なことか?

ところでこの人、例の記事の冒頭で、あくまでここに書いてあることは、プロ志向なのに関わらず集客力が弱いバンドに向けた記事であって、趣味バンドはその限りではないことを、断っている。

でもこの理屈、少しおかしくないか。ライブハウスにとって、出演バンドがプロ志向かどうかなんて正直にいって全く関係ないと思う。だって、プロ志向バンドだろうが、社会人の趣味バンドだろうが、高校生バンドだろうが、チケットノルマは同じく課せられているじゃないか。

至極単純な話で、店側にとって、いいライブをしてたくさん動員をしてくれるバンドがいいバンドなのだ。プロ志向かどうかなんて全く関係ない。だって、そんなのただの「意識の問題」じゃないか。誰もてめえのアティチュードなんて知ったこっちゃねえって話だ。

趣味バンドでも良いパフォーマンスをして動員も多ければ、そのバンドはライブハウスにとって、「上客」だ。
中には、あまりにクオリティが高くてそのうち「プロ」になってしまう社会人趣味バンドもいるかもしれない。まあ、その、バンドにおける「プロ」というのを、どう定義するのかっていうのも問題になってくるとは思うが。

ちなみに、僕が出演しているライブバーでは、そんじゃそこらの「プロのバンド」よりもよっぽどかっこいいアマチュアバンドがたくさん出演している。ホント、プロってなんだろうってつくづく考えさせられるもんだ。

ライブハウスの環境は贅沢すぎる

ここからは、僕の持論を少し。
まず、僕自身、かれこれ20歳の時に、当時教えていた高校の軽音楽部のために卒業ライブを企画したことがあったが、これを最後に、金輪際お金を持ち出すライブは一切やらないことを宣言した。

当時、すでに僕はぼちぼちと横浜界隈のライブバーでライブをやらさせてもらっていて、そういうところではノルマなんて払うことなく、むしろ集客をした分アガリをもらっていた。

そういうライブバーは、一般的なバンドマンがライブを行うライブハウスとは違い、店の規模も小さめで、機材のクオリティもワンランクは下がる。あと、何よりライブハウスほどの爆音は出せない。

でも、実際にそういうところで演奏してみると、少なくとも僕にとっては充分すぎる環境だった。店の規模が小さい分、お客さんとの距離感も近い。お客さんの表情もよく見て取れて、楽しんでもらっているのか飽きられているのかがよくわかる。時には、ヤジも聞こえる。
こういう環境は、思っている以上に鍛えられる。

かたやライブハウスではどうだろうか。
機材の設備はとてもいい。ドデカなスタックタイプのマーシャルを、好きなだけ爆音で鳴らしても怒られはしない。ボーカルが聞こえなかったら、PAスタッフに言おう。足元の立派なモニタースピーカーでこれでもかと声を返してくれる。照明も素敵だ。僕らをまるで武道館で演奏するスターバンドのごとく、キラキラと華やかに演出してくれる。ステージの音には、これでもかとリバーブを効かせ、極上のサウンドがフロアに鳴り響く。

でも、これ、過剰すぎるサービスだとは思わないか?
果たしてそこまでの立派な環境が、音楽をするのに必要だろうか。

夢、30分で3万円

僕がライブハウスに出演していた5年ほど前の頃には、だいたい1バンド3万円のノルマが課せられていた。チケットを、1000円で30枚とか、1500円で20枚でバンドに売りさばかさせるといった具合だ。

もちろん、そんなたくさんのチケットを売りさばけるわけもないので、売れ残り分は、メンバーの数で割って、一人5000円とか平気で持ち出していた。ソロの人なんて大変だ。一人だからその分ノルマが安いとはいえ、3万が2万になる程度の話だ。

さて、そんな3万円の値段が付けられている1ステージ。演奏時間は30分程度だ。その30分は僕らバンドマンを、素敵なスターにしてくれる夢の時間。

夢、30分で3万円。

これを高いと思うか、安いと思うかは、それぞれの価値観だ。
まあ、僕にとっては口が腫れるどころの騒ぎではない贅沢なんだが。

終わりに

バンドマンたちの間で話題になっていた記事について、僕なりに思うところを書いてみた。

曰く、「ライブで集客のできないバンドは、ライブに対する考えを改めよ」というのが本当に伝えたかったメッセージのようで、過激なタイトルのせいで、誤解されていると本人が弁解している。まあ、後からなら、なんとでも言えるわな。だったら最初からそんな人を馬鹿にしたようなタイトルを記事につけるなってんだ。

意外にも、この論に賛成しているバンドマンは知り合いにもいる。
そんな彼・彼女らは、今やっているバンドでプロを目指しているらしい。その心意気は眩しいほどギラギラだ。

バンドマンとして、勝ち組となることだけを考えていて、その下の負け組バンドには、目にも触れないのかもしれない。
決して嫌味ではない。そんな彼・彼女らが、夢に破れ、挫折しないことを切に願う。

あと、どうでもいいことだが、例のブログ記事を初めて目にした際、「どうせこの手の人、ユニクロの柳井正の『世界同一賃金』や『年収100万円も仕方ない』なんていう発言にウンウン頷いているような輩なんだろう」だなんて思っていたら、本当に、彼のTwitterの書き込みで、柳井正の本に対して好意的なコメントを述べていた。

月並みな感想だが、ホント「ふーん、やっぱりねー」って感じだ。


卒業ライブ写真。自分と永樹


上の写真は、記事中に書いた、僕が最後にお金を払ってライブハウスに出演した時のもの。
Led ZeppelinのTシャツ姿に、レスポールという印象的な彼は、現在Kogarashiというバンドで活動中の篠原永樹くん(@jimieiki)。

写真撮影は、友人のtakaramahayaくん(@mahayap)。
彼もまた、素晴らしい写真で、僕らをスターに仕立て上げてくれた。

5月26日 追記

永樹くんがTwitterでこの記事のことをリツイートしてくれたので、もしかしたら当初目論んでいたよりも、多くの人に読まれる可能性があるので、補足的な追記をしておく。

結局のところ、例の彼が提言している(つもりらしい)、集客のできないバンドは、やみくもにライブをするんじゃなくて、ライブ活動について一度考え直したらどうかという意見は、僕も全くもって同感だ。と言うよりも、まともな感覚を持っていればこんなの何も特別なことじゃなくて、当たり前に持つ意見だと思う。
僕が腹ただしいのは随分と高いところからものを言っている、あの挑発的なタイトルであって、あんなように書かれていれば、例えどんなに正論を繰り広げられても、気に食わないもんだ。

 

また、後半からは僕のライブハウスに対しての意見を述べた。読んで頂くとわかる通り、僕自身は、今現在のライブハウスのあり方に対して、かなり否定的な視点で見ている。

そして、例の彼が書いている「売れないバンドは、もっと規模の小さい箱や、ライブバーなんかでライブをこなしていくべき」だという意見にも、全くもって同感だ。(まあ、そういうお店の方が希少で、大きなライブハウスよりも敷居が低いわけでも決してないんだけどね。)

と、きっとこう書くと「うちらのバンドじゃあ、そんな小さなところじゃ、音量的に無理だ」といった意見も抱かれるかもしれないけど、そういうのは各自考えてくださいよ。まずは自分たちで考えて、できると思えばやればいいし、できないと思うのならやらなければいい。

案外自分たちが思っているほど、「爆音のスタイル」というのは、個性でもなんでもないと思う。ギタリストはただアンプの音量を下げればいいし、例えツーバスのドラマーでも、口径が小さいものや胴が薄い太鼓を使うなり、工夫すればいい。ちなみに、うちのドラマーのガンさん(現在50歳)は、某渋谷のブルースバーでリハの際、店のマスターに音量を下げて叩いてくれと言われ、本番ではなんと竹ヒゴをガムテープで束ねたお手製スティックで叩いていた。そのグルーヴが、いつも通りの最高なものだったのは言うまでもない。

横浜のとあるライブバーの、某マスター(セクハラ発言の神様として知られる)は、「結局、爆音だなんて、男がいう俺のアソコが大きいっていう自慢と一緒なんだよ」だなんて言っていた。
例えはともかく、元プロミュージシャンで、現在は連日ライブが繰り広げられるお店のマスターが言うことだ。真剣に受け止めるべきだろう。

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