モータウンビートで女性が歌うと名曲になる? 

音楽コラム

広末涼子が歌う「MajiでKoiする5秒前」、プリンセスプリンセス(PRINCESS PRINCESS)の「ダイアモンド(Diamonds)」。いつの時代になっても、人々から愛されている。どんな時に聴いても私達のテンションを高めてくれるからではないだろうか。

これらJ-POPの楽曲には、ある共通するリズムが使われている。いわゆる「モータウンビート」だ。日本の楽曲では本田美奈子の「Oneway Generation」で使われているように、30年以上前からこのリズムが楽曲に用いられている。

30年以上前から現在までモータウンビートが楽曲で使われるのは、何か理由があるからではないだろうか?

人々から愛されるモータウンビート

先程述べたように、モータウンビートを用いた楽曲は人々に愛される傾向にあると感じる。軽快なリズム・歯切りの良いビートのためテンションが高まる人々がいるからだと考える。気持ちが落ち込んでいても、モータウンビートの楽曲を聴くことで楽しい気持ちにさせられることは間違いない。筆者も気持ちが沈んでしまった時には、広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」をいつも聴いている。

ちなみに、身近なところではヨドバシカメラのCMソングでもこのビートが用いられていた。

今回は、邦楽で用いられるモータウンビート、その中でも女性が歌う楽曲に焦点を当てて意見を述べていく。

そもそもモータウンビートとは——モータウンビートの歴史

1966年にスプリームス(The Supremes)が発表した「恋はあせらず(You Can’t Hurry Love)」で用いられる「ダッダッダ―、ダッダッダ・ダーダー」のようなリズムの俗称だ。モータウン・レーベルから発表された事に由来されているためだと言われる。

日本人がモータウンビートという言葉を使う場合には、大抵が上記のリズムを指している。もちろん、モータウンには他のリズムの楽曲もたくさんあるが、なぜか、日本ではこのリズムがモータウンビートと呼ばれている。

ちなみに、モータウン・レーベルからは同じリズムの楽曲で、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の「パートタイム・ラヴァー(Part-Time Lover)」がリリースされている。

モータウンビートが楽曲で用いられる理由

モータウンビートが楽曲で用いられる理由は以下の3点だと私は考える。

  • 特徴的なリズム
  • カノン進行と相性が良い
  • どこか懐かしさを感じる

特徴的なリズム

モータウンビートが楽曲で用いられる理由の1つに「特徴的なリズム」がある。

歯切れのいいスタッカート、軽快にハネている、絶妙にシンコペーションの効くこのリズムは一度聴くだけで印象に残る。例え音楽経験に乏しい人が聴いたとしても、このノリにテンションが上がり踊りだしたくなるだろう。

また、ファンクのノリや、ジャズの4ビートとはまた違う、この独特のノリは人々に楽曲のイメージを植え付ける事に一役買っている。

カノン進行と相性が良い

モータウンビートが楽曲で用いられる理由の1つに「カノン進行と相性が良い」事があげられる。

カノン進行とは、ヨハン・パッヘルベル(Johann Pachelbel)の「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調の1曲目(通称:カノン)」で用いられるコード進行の俗称だ。多くの邦楽で頻繁に用いられており、日本人に取って馴染みの深いコード進行の一つだ。特に楽曲のサビで用いることでポップさを演出している。

カノン進行のポップさに、モータウンビートの軽快さが合わさることで、よりポップな印象を楽曲に加える事ができる。ただカノン進行を使うだけでは楽曲の印象が弱いと感じた時に変化を与えるために使える。

◼カノン進行の例:(Key=C)

C G Am Em F C F G

どこか懐かしさを感じる

モータウンビートが楽曲で用いられる理由の1つに「どこか懐かしさを感じとれる」事があげられる。

元々、1960年代のアメリカで生み出されたリズムであるため、その印象を持つ人々には懐かしさを演出する事ができる。例えば、AKB48の「涙のシーソーゲーム」ではモータウンビートの持つ懐かしい雰囲気を楽曲の特徴としてうまく消化している。

女性ボーカルと相性の良いモータウンビート

モータウンビートは女性ボーカルと組み合わさることで、ハッピーでウキウキするようなイメージを楽曲に与えてくれる。なぜなら、女性のボーカル特有の高めの音域に対して、モータウンビートの持つハネたノリが加わることで、明るい印象が楽曲に出てくるからだ。

これは同時に、明るくてハッピーな歌詞と相性が良くなることも意味する。例えば、「明日、彼と会うのを楽しみにしている女性の感情」を歌った歌詞や「眼の前にいる男性に一目惚れしちゃった!」など幸せな恋の歌詞と相性が良い。

さらに、女性アイドルなど歌と同時にダンスをする楽曲でモータウンビートを用いることで、ポップなダンスナンバーとしての印象を楽曲に与えることもできる。また、ハネたリズムのため、ダンスも自然と可愛いものとなる。

したがって、女性アイドルグループなどの楽曲ではモータウンビートを用いる機会がたくさんあるのだ。女性ボーカルと相性が良いことから、必然的にモータウンビートの女性ボーカル曲は名曲になりやすいのではないかと考える。

男性ボーカルのモータウンビートはロックで使われる

先程から述べているように、女性ボーカルでモータウンビートを用いる場合、主にポップスで使われることが多い。一方、男性ボーカルでモータウンビートを用いる場合、ロックで使われる事が多いと私は感じる。

例えば、布袋寅泰の「POISON(ポイズン)」やジェット(Jet)の「アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール(Are You Gonna Be My Girl)」などで用いられている。

その理由は、ブルースやロックンロールなどシャッフルなノリの楽曲を消化してきたミュージシャンのギターフレーズと相性が良いからだろう。モータウンビートでは3連符のフレーズとも相性が良いため、自然とロックでモータウンビートが用いられてきたのではないだろうか。

筆者の好きな「女性が歌うモータウンビートのJ-POP」4選

ここで私が好きな「女性が歌うモータウンビートのJ-POP・アイドルソング」を4つ紹介しよう。

AKB48 / 涙のシーソーゲーム

AKB48の楽曲の中でもかなりの名曲だと私は思う。実は、この曲は「ヘビーローテーション」のカップリング曲なのだが、表題曲としてリリースしても良かったのではないかと思っている。

個人的にこの曲のベースラインはシンプルだがとても好きでコピーしたことを思い出す。また、PVが1960年代を想像させる作りで面白い。バックバンドを後ろにアイドルが歌うという昔のアイドルのステージを再現した雰囲気が個人的に好きである。

乃木坂46 / 13日の金曜日

乃木坂46の楽曲の中でもファンからの人気が高い1曲。イントロでモータウンビート、Bメロで4ビートを用いてからのサビで再びモータウンビートを使用するセンスの良さがとてもいい。センターを務めている斉藤優里(ゆったん)はいつも笑顔で、テンションの高い女の子である。モータウンビートが与えるポップな印象と斉藤優里の個性がすごくマッチしている。

森高千里 / 私の夏

1993年リリースの楽曲。ANAのCMでも使われていたため聴いたことがある方も多いだろう。先程までの楽曲とは違うリズムだが、これもモータウンビートと捉えることができる。この曲のイントロのメロディとサビのメロディがワクワク感があってすごく好きである。また、この曲を聴いていると沖縄に行きたくなる。

広末涼子 / MajiでKoiする5秒前

聴いたことがない人はおそらくいないであろう名曲である。世間一般がイメージするモータウンビートの楽曲は、多分この曲ではないかと思う。広末涼子の声と楽曲とが完璧にマッチしていて非の打ち所がない。私はテンションが落ちている時や、悲しいことがあった時にこの曲を聴いて嫌なことを忘れている。

おわりに

先に述べた理由から、モータウンビートで女性ボーカルの楽曲は名曲となる。モータウンビートの持つ魅力と女性ボーカルの持つ魅力が交わることで普通の楽曲とは違った魅力がでてくる。その結果、人々から愛される楽曲がとなり何十年先もずっとその曲は聴かれ続けるのだ。

これから先も、モータウンビートの魅力を活用した楽曲が世の中でたくさん生まれてくれればと思う。また、私もモータウンビートの楽曲を作曲してYouTubeなどで広めていきたい。

一方で、男性ボーカルのモータウンビートの楽曲についても研究して、その魅力を伝える記事を書けたらと考えている。

ライター:モリダイキ

横浜生まれ、横浜育ち。ギターとお酒が大好きなエンジニアです。好きな音楽は60s-80sのロック、歌謡曲、アイドルソングなど。

※この記事は、以前筆者が運営していた音楽サイト「バンド部ねっと」から移行した記事となります。