もうオワコン?ロックミュージックは近い将来、再興できるのか

音楽コラム
ステージ上のギター

今、世界中ではCDが売れなくなり、代わりにApple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスで音楽を聴くスタイルが主流になっていこうとしています。ここ日本でも、他国と比べるとまだそれほど落ちてないとはいえ、90〜00年代のCDの売り上げと比べたらだいぶ落ちています。

そんな中、今世界で流行ってる音楽はなんだろうか? 2017年USEN海外のランキングを見てみると、ポップミュージックやEDM(エレクトロ二ックダンスミュージック)がヒットチャートを賑わしています。

反対に、ロックバンドはなかなかトップ10に食い込めていません。同ページ掲載のJ-POPのランキングもまた、同じような状況になっています。

今、世界の音楽シーンの中では、ロックミュージックは全盛期に比べて大きく衰退している状況に陥っています。このままだとロックはもうオワコン——つまり時代遅れの音楽として、全盛期のような人気を得ることなく終わってしまうのだろうか?

DTMがロックを殺した?

なぜロックバンドはヒットチャートのトップ10に入れなくなったのか。ロックやバンド音楽の人気衰退の様々な要因の一つとしてよく挙げられているのが、DTMの進歩により楽器を持たずとも誰でも気軽に一人で音楽を作れるようになったからというのがあります。

まずDTMとは何か?

DTMはDesk Top Musicの略称で、DAWと呼ばれるPC上の音楽制作用ソフトウェアを操作することで、PC1台で音楽制作や編集を行うことを指します。今ではPCだけでなく、iPadのようなタブレットからiPhone、Androidといったスマホでさえ、気軽に制作が出来るようになっています。

  • 楽器が演奏出来なくても、マウス操作で作曲が出来る
  • 楽器を弾ける方は演奏の録音や編集が簡単に出来る

など、DTMを使えば誰でも自分のスタイルで音楽を楽しむ事が出来ます。

DTMが主流になる以前の00年代前半までは、バンドスタイルの楽曲を作りたいならギター・ベース・ドラムなどのメンバーを集めて曲を作る必要がありました。また、アマチュアのソロアーティストは、せいぜいギターやピアノでの弾き語り一本か、バンドスタイルでライブやレコーディングをしたい場合はサポートメンバーを集めなければなりませんでした。

しかし現在はDTMを導入することで、バンドメンバーを集めないと曲が出来ないということはなくなり、パソコンと電子楽器だけででも本格的なレコーディングができる時代になりました。

上の動画のKogarashiというバンドは私の知り合いで、ボーカル・ギター・ベース以外は全てGarageBandというAppleが出しているDAWアプリを使っています。GarageBandはMacやiPad、iPhoneで無料で利用できるアプリですが、このように生バンドに負けず劣らずのクオリティーで制作できてしまいます。

ロックはオッサンの音楽になった

DTMの進出だけがロックミュージック衰退の決定因子とはならない。

ロックミュージックを聴く年齢層にも要因があります。30〜40年前、エアロスミス(Aerosmith)やヴァンヘイレン(Van Halen)などの海外ロックミュージシャンが好きでライブを観に行ってた若者も、今となっては立派なおじさんおばさんとなりました。現在の海外ロックミュージシャンのライブ客の大半は、その世代の人たちで埋まっています。

これは紛れもなくロックの高齢化と言えます。演奏するミュージシャンも、それを聴くファンも皆おじさんおばさん。一言で言うならば、ロックはオッサンの音楽になってしまったのです。

しかし、エアロスミスやヴァンヘイレンなどのアーティストだけがロックのすべてではありません。ロックの中にも様々なジャンルがあります。バンド好きの若者の間で流行ってるロックのスタイルやロックバンドだってあるので、ただ単にロックを聴く人が高齢化したからオワコンになったと言ってしまうのは早計です。

SNSで拡散されやすい「#踊ってみた」

ここでは日本の現状を見てみましょう。

今から約30年前の1980年代後半、一般の人達がどんな音楽を聴いていたかと言うと、当時はちょうどバンドブーム。つまり、普通の高校生や大学生などもロックを好んで聴いていました。しかし、今現在ロックを好き好んで聴いているのは一部の人達だけです。代わりに今の一般層に最も聴かれている音楽といえば、ダンスミュージックになっています。

ダンスミュージックが流行る要因として、忘れてはいけないのがSNSの存在です。

現在人気を集めているダンスミュージックの中には、誰でも簡単に真似できるよう、あえてダンス初心者でも踊れるようにダンスを簡単に構成している楽曲も数多くあります。なぜなら、このようにある程度簡単なダンスに仕上げておくことで、TwitterやInstagram、Tik TokなどのSNSやYouTubeで「踊ってみた」動画として取り上げられやすくなるからです。

アマチュアの踊ってみた動画自体は、アーティスト本人の収益にはまるで影響しません。しかし、アマチュアの踊ってみた動画が拡散されることによる楽曲の宣伝効果は莫大な影響力を持っています。実際に以下のDA PUMPの「U.S.A」などは、SNSの影響なくしてここまでのヒットはあり得なかったでしょう。

U.S.A. / DA PUMP

DA PUMPのU.S.Aという曲は片足でジャンプしながら腕を振る「シュートダンス」を取り入れたことで、それがダサかっこいい魅力となっています。結果として、多くの人がこのダンスを真似し、TwitterやインスタなどのSNSやYouTubeで「踊ってみた」を載せたりしています。

例えば、以下の動画はとある中学校の文化祭での「U.S.A」のカバーです。

恋するフォーチュンクッキー / AKB48

5年前に出たAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」もまた、踊りが覚えやすいことから、一般人はもちろん、芸能人も「踊ってみた」を載せています。

以下の動画は仙台市消防局が中心となって制作されたカバー動画です。

また、以下の動画はTHE COLLECTORSや怒髪天、真心ブラザースなど日本の代表的なロックバンドのメンバーらが宴会ノリで「恋するフォーチュンクッキー」を踊ってしまったという、なかなか衝撃的な動画です。

それでも、ギターを買ってバンドを組むヤツもいる

上記してきたように、1980年代後半〜1990年代前半のバンドブームの頃に一般層にバンド音楽が広く受け入れられていたように、現在ではダンスミュージックが一般層に親しまれています。

そんな中でも一部の高校生はギターを買って軽音部に入り、バンドを組んで演奏をしています。

彼らがギターを始めたそもそもの理由も、「モテたい」「とあるバンドのギタリストに憧れて始めた」などといった、おおかた20年前・30年前・40年前のギターキッズと同じような理由でしょう。そういったある種の変身願望からギターを持ち出した人も、今でも一定数は存在しています。

そういった理由でギターを始めた人たちは、その後挫折してギターを辞める人もいれば、そのまま音楽の世界にのめり込んでいって音楽で食べていく道を歩む人、たとえ食えなかったとしても趣味でずっと続ける人など、様々です。

私も2007年のポルノグラフィティのライブを観たとき、「ギターって物凄くカッコいい」と思い、ギターを始めました。そしてギターを弾いているうちに、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)やジミー・ペイジ(Jimmy Page)といったギタリストも聴くようになり、彼らをコピーしました。

ロックの今後

これまで述べてきたように今現在、ロックミュージックは流行の廃れやDTMに代表される技術進歩により、ダンス音楽に押され気味で、結果としてヒットチャートにはなかなか食い込めていません。しかし、音楽の流行というものは、永遠に続くわけではなく、絶対にいつかは終わってしまうものです。

かつて90年代前半に世界中で流行っていたグランジ・ロックのブームも、カリスマ的存在のカート・コバーン(Kurt Cobain)の死によって終わりを迎えました。

また、90年代後半には小室哲哉がプロデュースした曲がミリオンセラーを飛ばしまくるなど、日本では小室ブームが起きていましたが、こちらも宇多田ヒカルやその他あらゆるジャンルのアーティストが出てきた事により、小室ブームは長く続くことなく衰退していきました。

EDMの次に来るもの

今流行ってるEDMもいつか衰退してしまう可能性はあります。ただし、その衰退する時期がいつかはわかりません。数年後かもしれないし、数カ月後かもしれない。ひょっとしたら明日かもしれません。

仮に将来的にEDMのブームが廃れるとすれば、その後のブームには、再びロック音楽が来るかもしれないし、真新しいジャンルが来るかもしれないです。

そして、仮にEDMの人気が今後衰えたとしても、EDMもまたクラシックやジャズなどのように、好きな人には一生聴き続けられる音楽としてずっと存在し続けるでしょう。

正直、私には将来どんな音楽が流行るか、次になにが来るのかはさっぱりわかりません。

しかし、今の流行や価値観をひっくり返してしまうような音楽をつくれる可能性は、どんな人にも秘められています。その時代を動かす人となるのは、ロックを盛り上げ新しいムーブメントを作りたいと思っている私や、友人たちかもしれない。

もしくはこの記事を読んでいるあなたかもしれない。

ライター:篠原永樹

※この記事は、以前筆者が運営していた音楽サイト「バンド部ねっと」から移行した記事となります。