アルバム紹介・解説|クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(1968)——南部テイストたっぷりのロックバンドCCRの快進撃はここから始まった!

音楽レビュー
Creedence Cleawater Rivival(CCR) 1stアルバムジャケット

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(英:Creedence Clearwater Revival, 略:CCR)というなんともまあ長くもあり、それでいて何故か口に出してみたくもあるその不思議なバンド名の彼らのデビューは1968年。

当時のアメリカはベトナム戦争の真っ只中であり、また彼らのデビューに先立つ4月4日には公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King, Jr.)が暗殺された年でもあった。また、6月6日には時期大統領候補として有力視されていたロバート・ケネディ(Robert F. Kennedy)も暗殺されている。

そんな激動の時代の最中、彗星のごとくデビューした彼らCCRであるが、デビュー作である本作は彼らの作品の中で最もブルースフィール溢れる作品であり、それでいて「ポータービル」のような、持ち前のワーキングクラスの声を代弁した歌も本作にはさっそく収録されている。

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのメンバー

ジョン・フォガティ(John Fogerty)

ボーカル&ギター担当。1945年5月28日生。アメリカ・カリフォルニア州バークレー出身。

CCRを代表するメンバーであり、オリジナル曲のほとんど全曲を手がけている。現在もジョン・フォガティとしてソロ活動を精力的に行っている。

2010年のローリングストーン誌の「最も偉大なギタリスト100人(100 Greatest Guitarists of All Time)」で50位、「最も偉大なシンガー100人(100 Greatest Singers of All Time)」で72位を獲得。

トム・フォガティ(Tom Fogerty)

ギター担当。1941年9月9日生、1990年9月1日没。アメリカ・カリフォルニア州バークレー出身。

ジョン・フォガティの実兄であり、彼以外のジョン・ステュ・タグの3人で結成されていた前身バンドに加わる形で加入した。後にジョンのワンマン形態と化しているバンドに嫌気が差し、脱退。

糖尿病手術のために受けた輸血からエイズに感染してしまい、48歳で逝去する。

ステュ・クック(Stu Cook)

ベース担当。1945年4月25日生。アメリカ・カリフォルニア州出身。

CCRの解散後、ドラマーだったタグと一緒にザ・ドン・ハリスンバンドなどを経て、1995年にはクリーデンス・クリアウォーター・リビジット(Creedence Clearwater Revisited)を結成。クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル時代の曲をライブで披露しているが、ジョン・フォガティとは無関係である。

タグ・クリフォード(Doug Clifford)

ドラム担当。1945年4月24日生。アメリカ・カリフォルニア州出身。

ステュと同じく、現在はクリーデンス・クリアウォーター・リビジットとして活動している。

本作発表までの経緯

CCRの前身バンドはジョン・ステュ・タグの3人が中学生だった頃に結成された。後にそのバンド、ブルーベルベッツ(The Blue Velvets)にはジョンの兄トムも加入。1964年にはジャズ系インディーズレーベルのファンタジー(Fantasy)と契約し、バンド名をゴリウォッグス(The Golliwogs – 醜い男たちの意)と変えされられる。

また、このときにステュがピアノからギターへ、トムがリードボーカルからリズムギターへ、そしてジョンがリードボーカルとメインソングライターとして、それぞれのパートを変わることとなった。

1966年にはジョンとタグが兵役に召集されるなど、バンドとして頓挫する事態も起きたが、翌年67年にはファンタジーによって初のフルアルバムを録音する機会が与えられ、忌々しかった「ゴリウォッグス」というバンド名も「クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル」に改めることとなった。

なお、この兵役に就いている間、ジョン・フォガティはまだ訪れたことのないアメリカ南部の綿摘み畑や湿地帯などの風景を思い浮かべながら曲を書くことで、恐怖心や罪悪感を忘れようとしていたという。

その翌年1968年にはいよいよ、ジョンとタグの二人も兵役を終え、メンバーはそれまでの仕事を辞めバンドに全力を注ぐこととなり、その後のCCRの快進撃の始まりとなった。

Creedence Clearwater Revival(Album)|各曲解説

リリース日時 1968年5月28日
ジャンル ロック
収録時間 33分17秒
レーベル ファンタジー

■A面

アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー – I Put a Spell on You(S. J. Hawkins)

本作の幕開けは、ドロドロした3連ビートのスクリーミング・J・ホーキンスのカバーによって始まる。CCRを代表する曲の1つであり、本作からシングルカットもされた。

オリジナルのホーキンスほどのおどおどろしい雰囲気はないが、当時まだ23歳のジョンの迫真のシャウトは聴くものを圧倒するパワーを誇っており、彼らCCRの勢いがひしひしと伝わってくる。

「お前に呪文をかけてやる。だってお前は俺のものだから!」と歌うその歌詞は、内容こそ同じでも、歌い手によって全く違った様子を見せている。

ザ・ワーキング・マン – The Working Man(J. Fogerty)

全曲とは変わって、続くこの曲はベースとギターによるユニゾンの単音リフから始まるオリジナルのロックンロールナンバー。コード進行に多少のひねりをきかせているとはいえ、あくまでベースとなっているのはブルースで、本作のブルースを基調とした色合いがよく現れている曲だ。

「日曜日に生まれて、木曜には仕事に出かけていた」と歌うその歌詞の内容はタイトルそのままに”労働者”のことを歌っており、労働者階級の声を歌うジョンならではの曲である。

スージー・Q – Suzie Q(D. Hawkins, E. Broadwater, S Lewis)

A面最後の曲となっているのはデイル・ホーキンズの名曲のカバーで、シングルカットもされ、本作からの一番のヒット曲となっている。

当時のシングル曲としてはかなり長い曲だったため、シングルバージョンでは半分にカットされ、シングル盤の表と裏に収められる形で収録されたが、当然本作ではフルバージョンでの収録となっている。

オリジナルバージョンでギターを弾いているジェームズ・バートンのスタイルを忠実に再現したジョン・フォガティの鋭いギターもまた聴きどころである。

■B面

99.5 – Ninety-Nine and a Half (Won’t Do)(S. Cropper, E. Floyd, W. Pickett)

B面一曲目を飾るのはソウル歌手ウィルソン・ピケットのヒット曲のカバーで、奥まった感じのミックスなども含め原曲を忠実に再現したアレンジとなっている。

ここで聴けるジョンのシャウトの勢いはすごいものがあり、聴くものを圧倒するようなエネルギーに満ちている。

ゲット・ダウン・ウーマン – Get Down Woman(J. Fogerty)

ジャズのテイストを取り入れたブルース形態のオリジナル曲で、スウィングを意識したドラムやウォーキングするベース、4つ刻みをするリズムギターなど、ジャズを意識しつつもなりきれていない感じがまた、ロックバンドのオリジナルらしく聞こえてくる。

歌詞の内容は典型的なブルースソングらしく、男女のことを歌ったものだ。

ポータービル – Porterville(J. Fogerty)

録音はアルバムよりもかなり前の1967年10月で、当初はその年の11月にゴリウォッグスとしてのラストシングル曲としてリリースされた曲である。

ジョン・フォガティのソングライターとしての才能の芽生えの片鱗が垣間見える楽曲であり、ありふれたラブソングではなく、より深いテーマ性を持つ曲を書く彼の方向性を決定づけた曲となった。

歌詞の内容は彼の自叙伝的な要素も帯びており、脚色はあれど両親のアルコール依存や離婚など、彼のあまり幸せではなかった幼少期の体験を歌ったものである。

グルーミー – Gloomy(J. Fogerty)

「陰鬱な」などといった意味のタイトルの通り、冒頭からジョンのボーカルはどんよりと重く、この暗い曲の雰囲気を一段と強めている。

そして、中盤のサイケデリック風な逆再生ギターサウンドの後は、ひたすらジョンのギターソロとなり、前半の暗い曲調から一転して激しさを増している。

ウォーク・オン・ザ・ウォーター – Walk on the Water(J. Fogerty, Tom Fogerty)

アルバムの最後を飾るのは珍しくジョンとトムのフォガティ兄弟の共作曲で、元は66年にゴリウォッグス時代にシングルとしてリリースされた曲である。

ただし、録音は新しく録り直されたもので、前述のシングルバージョンに比べサウンドの迫力は断然に上がりつつも、SFチックな効果音がところどころに入れられていたりと、当時のサイケデリックロックの影響が感じられるアレンジに仕上がっている。

また、ここでも曲の後半はジョンのギターソロの独擅場となっており、見ものである。

まとめ

「スージー・Q」「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー 」「ポータービル」といったシングル曲を出した本作だったが、アルバムとしては発表当初の評論家からの評価は良いものではなかった。

バリー・ギフォードはローリングストーンズ誌の中で、バンドの注目に値する点はジョン・フォガティだけにあると評し、あくまで彼のボーカリストやリードギタリストとしての才能は認めた上で、それ以外のメンバーのドラムやベース、リズムギターは凡庸だとコメントした。

もちろん、本作はカバー曲が多い点も含め、ジョン・フォガティの才能が開花し切れているとは言いがたく、その後に続くCCRの作品に比べると見劣りしてしまう点はある。

しかし、それでもジョンの才能の片鱗がキラリと覗かせる瞬間は多く、その後のCCRというバンドの快進撃を知る筆者としては、一作目にしてここまで勢いのある作品を作ってしまったことがやはり素晴らしいというほかない。

なお、40周年記念盤にはボーナストラックとしてゴリウォッグス時代のシングル盤「ポータービル」B面の「コール・イット・プリテンディング(Call It Pretending)」、5作目にも収録されることとなる「ビフォア・ユー・アキューズ・ミー(Before You Accuse Me)」のアウトテイク、「99.5 」と「スージー・Q 」のライブバージョンが収録されている。

※この記事は、以前筆者が運営していた音楽サイト「バンド部ねっと」から移行した記事となります。