アルバム紹介・解説|クイーン『世界に捧ぐ』——奇をてらわずストレート勝負の6thアルバムは名曲揃い!
クイーンの6thアルバム『世界に捧ぐ(原題:News Of The World)』は、4thアルバム『オペラ座の夜』と5thアルバム『華麗なるレース』で、第一次の絶頂を迎えたクイーンが、それまでの凝りに凝った音作りの一部解体を試み、奇をてらわずにストレートなロック・ナンバーで勝負した一作といえる。
この『世界に捧ぐ』に収録されているナンバーは今現在もよく耳にする「ウィ・ウィル・ロック・ユー」や「伝説のチャンピオン」など、名曲揃いで名盤として今も語り継がれている。
- Queen – News Of The World|各曲解説
- アルバム基本情報
- ウィ・ウィル・ロック・ユー – We Will Rock You(ブライアン・メイ)
- 伝説のチャンピオン – We Are the Champions(フレディ・マーキュリー)
- シアー・ハート・アタック – Sheer Heart Attack(ロジャー・テイラー)
- オール・デッド – All Dead, All Dead(ブライアン・メイ)
- 永遠の翼 – Spread Your Wings(ジョン・ディーコン)
- 秘めたる炎 – Fight from the Inside(ロジャー・テイラー)
- ゲット・ダウン・メイク・ラヴ – Get Down, Make Love(フレディ・マーキュリー)
- うつろな人生 – Sleeping on the Sidewalk(ブライアン・メイ)
- 恋のゆくえ – Who Needs You(ジョン・ディーコン)
- イッツ・レイト – It’s Late(ブライアン・メイ)
- マイ・メランコリー・ブルース – My Melancholy Blues(フレディ・マーキュリー)
- まとめ
Queen – News Of The World|各曲解説
アルバム基本情報
リリース日時 | 1977年10月28日 |
---|---|
ジャンル | ハードロック |
収録時間 | 39分30秒 |
レーベル | EMI |
ウィ・ウィル・ロック・ユー – We Will Rock You(ブライアン・メイ)
「ドンドンバン」と足踏みと手拍子を多重録音したリズム音が余りにも有名なこのナンバーは、とてもストレートなロック・ナンバーである。誰もが必ず聴いたことがある楽曲で、クイーンを代表する一曲だ。
曲の作りはとてもシンプルで、これまでのクイーンにはなかった新機軸のナンバーといえ、この一曲で、『世界に捧ぐ』がそれまでクイーンが築いたものをぶち壊して新たな出発を踏み出したことを証明するに十分な名曲である。ブライアン・メイのギター・ソロもカッコイイ。
伝説のチャンピオン – We Are the Champions(フレディ・マーキュリー)
この曲も誰もが必ず聴いたことがある名曲である。最初は抑揚を抑えたフレディ・マーキュリーのピアノの弾き語りで始まり、「We Are the Champions」という箇所で一気に感情が溢れ出すかのような情感たっぷりな歌いぶりは、とてもドラマチックである。
曲の構成はとてもシンプルでありながらこんなにも劇的な歌を作るフレディ・マーキュリーもまた、この曲で、新しい試みを行ったと見え、複雑な構成のフレディ・マーキュリーならではの持ち味とは全く表情を変えたこの曲は、今も燦然と輝く名曲中の名曲である。
シアー・ハート・アタック – Sheer Heart Attack(ロジャー・テイラー)
同名の3rdアルバムがあるが、このナンバーは、当時はまだ、完成していなかったのである。満を持しての登場ともいえるロジャー・テイラーの手になるナンバーだ。リード・ヴォーカルはフレディ・マーキュリーが務めている。
曲調はドライヴ感に疾走感あふれるナンバーで、これがロジャー・テイラーの一つの持ち味といえる。快調にぶっ飛ばす中でも途中にシンセサイザーと思われるノイズに近い音を挿入するなど、アレンジもユニークで、クイーンにしか出せない色合いがこのナンバーにはある。
オール・デッド – All Dead, All Dead(ブライアン・メイ)
前曲の「シアー・ハート・アタック」がプツッと終わった途端にとてもリリカルなピアノの旋律の前曲とは全く表情が違う曲が始まるが、そんなこのナンバーは、ブライアン・メイが幼少期に飼っていた猫の死をモチーフとして書かれたナンバーだ。
リード・ヴォーカルもブライアン・メイが担当していて、悲しみがストレートに伝わってくるように切々と歌い上げるブライアン・メイのヴォーカルは深い味わいがあり、聴くものの心を揺さぶる。
永遠の翼 – Spread Your Wings(ジョン・ディーコン)
大変ドラマチックなジョン・ディーコンの手になるナンバーだ。リード・ヴォーカルはフレディ・マーキュリーが務めている。フレディ・マーキュリーのピアノの弾き語りで始まり、劇的に感情の高ぶりが感じられ、また、希望に満ちあふれたようにフレディ・マーキュリーが絶唱する。
ジョン・ディーコンの味のあるアコースティック・ギターとドラマチックさに花を添えるブライアン・メイのギターが、また、このナンバーを感動的にしている。
秘めたる炎 – Fight from the Inside(ロジャー・テイラー)
ロジャー・テイラーの手になるナンバーで、この曲でロジャー・テイラーは、ドラムスのみならず、リズム・ギター、ベース、コーラスなどほとんどをロジャー・テイラー一人で演奏している。
印象的なベース音が鳴り響き始まるこのナンバーは、とてもオーソドックスなロック・ナンバーである。一説にはアメリカン・ロックを意識して作られたともいわれていて、なるほど、そう言われれば、そう聞こえなくもないが、しかし、このナンバーでロジャー・テイラーは類い希なる才能の持ち主であることを証明している。聴き応え十分なナンバーだ。
ゲット・ダウン・メイク・ラヴ – Get Down, Make Love(フレディ・マーキュリー)
ジョン・ディーコンのベースとブライアン・メイのギターとフレディ・マーキュリーのピアノでサイケデリックな雰囲気漂う音世界を作り上げ、その中をフレディ・マーキュリーの力強いヴォーカルが駆け抜けて行く、クイーンのこれまでになかった印象のナンバーである。
間奏もシンセサイザーでの摩訶不思議な世界を作り上げ、夢心地とでもいったらいいのか、幻想的な味わいを醸し出す、とてもユニークなナンバーである。
うつろな人生 – Sleeping on the Sidewalk(ブライアン・メイ)
ブライアン・メイの手になる曲で、リード・ヴォーカルもブライアン・メイが務めている。ブルース・ロック調のナンバーで、ブライアン・メイのギターが終始カッコイイのである。野太いギター音で始まるこのナンバーは、ブライアン・メイのギター・テクニックの素晴らしさが際立ち、ギターを基軸に息の合ったバンド演奏を聴かせている。
このナンバーで、バックの演奏は1テイクでの録音で収録されていて、メンバーの息のぴったりなところを見せている。この曲もまた、これまでのクイーンにはなかった曲調のナンバーだ。
恋のゆくえ – Who Needs You(ジョン・ディーコン)
ジョン・ディーコンの手になる曲で、ジョン・ディーコンのアコースティック・ギターが小気味よくスパニッシュ・ギター風の演奏が味わい深い。もちろん、ブライアン・メイもスパニッシュ・ギター風の演奏を聴かせていて、ジョン・ディーコンはとてもユニークなナンバーを書くと感心する。
何か、陽だまりの中でのんびりと過ごし、とてもリラックスした雰囲気をリード・ヴォーカルのフレディ・マーキュリーが醸し出していて、『世界に捧ぐ』に爽やかな彩りを加えている。
イッツ・レイト – It’s Late(ブライアン・メイ)
ブライアン・メイの手になる曲で、リード・ヴォーカルはフレディ・マーキュリーが務めている。骨太のロック・ナンバーだ。転調があるが、全体的にはストレートながらもドラマチックな盛り上がりがあるナンバーとなっている。
このナンバーで、ブライアン・メイのテクニックが冴え渡るギター演奏がたっぷりと堪能でき、また、フレディ・マーキュリーのそのブライアン・メイのギターに負けない力強いヴォーカルに圧倒される。
マイ・メランコリー・ブルース – My Melancholy Blues(フレディ・マーキュリー)
このナンバーはジャジーな味わいたっぷりでフレディ・マーキュリーの持ち味が遺憾なく発揮されている。ピアノの弾き語りで情感たっぷりに歌い上げるフレディ・マーキュリーのヴォーカルは何物にも代えがたく、このナンバーは「ボヘミアン・ラプソディ」の系譜に当たり、それをとてもシンプルにしたナンバーといえる。
とにかく、このナンバーはフレディ・マーキュリーの独壇場で、メランコリックな雰囲気も漂わせながらのヴォーカルは聴くものの心に染み入る。
まとめ
とにかく、『世界に捧ぐ』は名曲揃いである。クイーンはこのアルバムで、これまで築き上げたものを一部とはいえ解体し、新たな世界を切り拓くことに成功したといえる。全曲がそんなに凝った作りではなく、シンプルなのだ。
シンプルながらもクイーンの持ち味がなくなるということはなく、かえってクイーンというバンドが傑出したバンドであることをこの『世界に捧ぐ』は証明している。また、4人のメンバーの個性がこの『世界に捧ぐ』では一層際立っていて、名盤といわれるのがよく分かる。
ライター:積緋露雪
1964年生まれ。栃木県在住。自費出版で小説『審問官』シリーズを第三章まで出版。普段はフリーのライターとして活動中。嘗ての角川書店の音楽雑誌「CDで~た」の執筆・編集・企画を担当という経歴の持ち主。
※この記事は、以前筆者が運営していた音楽サイト「バンド部ねっと」から移行した記事となります。