【解説】クイーン初のベストアルバム『グレイテスト・ヒッツ』は英国で史上一番売れた!

音楽レビュー
クイーン初のベストアルバム『グレイテスト・ヒッツ』ジャケット

1981年、今は懐かしく、しかし、最近その音色の柔らかさから再び売り上げが急増しているLP発売時、各国や地域でのヒット曲を収録したために全部で7種類のヴァージョン違いのものがあったが、CD化する際に収録曲を統一したものにしたのが現在あるクイーンの初のベスト盤『グレイテスト・ヒッツ』である。

このベスト盤は全世界で約2500万枚、英国では600万枚以上売り上げ、これはビートルズの『サージェント・ペパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』やオアシスの『モーニング・グローリー』よりも売れていて、英国史上最も売れたロック・アルバムとして燦然と輝きを放っている。

この記事の目次
  1. Queen – Greatest Hits|各曲解説
  2. まとめ

Queen – Greatest Hits|各曲解説

アルバム基本情報

リリース日時 1981年10月26日(英国)
ジャンル ハードロック
収録時間 58分19秒
レーベル EMI/パーラフォン

ボヘミアン・ラプソディ – Bohemian Rhapsody(フレディ・マーキュリー)

言わずと知れたクイーンの代表曲であり、ロック史上に残る名曲中の名曲で、20世紀が生んだ傑作である。

クイーンを代表する1975年リリースのアルバム『オペラ座の夜』に収録され、また、シングルでも発売されたナンバーである。6分弱という長さはシングル曲としては異例だったが、本国英国では9週連続№1を記録した。

誰もが一度は耳にしたことがあるので、分かると思うが、最初のクイーンならではの美しいコーラスで静かに幕が開き、これから奇想天外な狂詩曲(ラプソディ)が始まるのだ。

やがて、フレディのピアノの弾き語りで切々と歌い上げられるそのヴォーカルにうっとりしていると、ブライアンのギターが鳴り響き、これが合図となって転調に転調を繰り返す圧倒的なまさにロック・オペラというべきクラシカルな展開の「ボヘミアン・ラプソディ」が最高潮を迎える。

特に鍵を握るのはブライアンのギターで、鮮烈極まりないのである。終曲はフレディのピアノの弾き語りとブライアンのリリカルなギター演奏で静かに幕を閉じる。この難曲でのクイーンの演奏は見事の一言に尽きる。

地獄へ道連れ – Another One Bites The Dust(ジョン・ディーコン)

1980年にシングル曲としてリリースされ、その後、同年リリースのアルバム『ザ・ゲーム』に収録されたナンバーで、アメリカを始め、全世界で大ヒットを記録したクイーンを代表するナンバーの一つである。

このナンバーを手がけたジョンのベースがディスコチックにもファンキーなビートを刻み、それがこのナンバーの命綱ともいえる。

そして、ジョンのベースが刻むビートに完全に乗ったフレディの情熱的なヴォーカルが炸裂し、また、ブライアンのファンキーなギターがかき鳴らされながら、このタイトなナンバーを渾身の演奏で聴かせている。

キラー・クイーン – Killer Queen(フレディ・マーキュリー)

1974年リリースのアルバム『シアー・ハート・アタック』収録曲で、また、『シアー・ハート・アタック』からの第一弾シングル曲ともなったナンバーで、クイーンがアメリカへとそのファン層を広げたナンバーでもある。

指を鳴らしてカウントを取り、フレディのピアノの弾き語りで始まるこのナンバーは、洗練されていて、とにかくオシャレなのである。

クイーンお得意のコーラスがふんだんに盛り込まれ、時にブライアンのギターが全面に出るなど、「ボヘミア・ラプソディ」に通じる手法がところどころ顔を出し、複雑な展開はクイーンの本領発揮といったところで、しかし、オシャレな雰囲気は全く失われることはないのである。

ファット・ボトムド・ガールズ – Fat Bottomed Girls(ブライアン・メイ)

1978年にリリースされたシングル曲で、後に同年リリースのアルバム『ジャズ』にも収録されたハード・ロック・ナンバーである。この当時のライヴではおなじみのナンバーで、ライヴではよく演奏された。ブライアンのギンギンと鳴るギターを軸に疾走感あふれるナンバーが一気に駆け抜ける。

タイトルを訳すと「尻の大きな女たち」という意味となる。フレディのリード・ヴォーカルは期待を裏切らず、ハード・ロック・ナンバーでもブライアンのギターとの掛け合いなど含め、力強くも色気があるヴォーカルで熱唱している。

バイシクル・レース – Bicycle Race(フレディ・マーキュリー)

前曲「ファッット・ボトムド・ガールズ」との両A面として1978年にシングル曲としてリリースされ、また、同年リリースのアルバム『ジャズ』にも収録された。この曲はフレディが自転車ロードレースの「ツール・ド・フランス」を観ていて影響を受け書かれたナンバーである。

テレビなどで自転車の場面のBGMとしてよく使用されているので一度は耳にしたことがあるナンバーだと思うが、抜きつ抜かれつの自転車レースの様子を転調に転調を重ねることで表現していて、手に汗握る自転車レースの様子が上手く表現できている。

相変わらず、フレディのヴォーカルは自由自在といったこれまた表現力豊かなヴォーカルを聴かせていて、途中で自転車のベルが鳴るなど遊び心も忘れずに、また、コーラスも見事なナンバーである。

マイ・ベスト・フレンド – You’re My Best Friend(ジョン・ディーコン)

クイーンの最高傑作との呼び声が高い1975年リリースのアルバム『オペラ座の夜』収録のナンバーで、翌年に『オペラ座の夜』の第2弾シングル曲としてリリースされたナンバーでもある。

ジョンが味わい深い電子ピアノも演奏し、このナンバーはジョンの妻に送ったナンバーといわれ、大いなる愛で包み込むような温かい眼差しが感じられる愛情あふれるヴォーカルをフレディが聴かせ、クイーンならではの美しいコーラスも印象的などこかノスタルジーすら感じさせるラヴ・ソングである。

ドント・ストップ・ミー・ナウ – Don’t Stop Me Now(フレディ・マーキュリー)

1978年リリースのアルバム『ジャズ』に収録されたナンバーで、翌年、シングル・カットされてスマッシュ・ヒットとなったナンバーでもある。

バラード調のフレディのドラマチックなピアノの弾き語りで始まるが、コーラスで転調し、その後はドライヴ感あふれるフレディのピアノの弾き語りで一気に聴かせるなんだかウキウキしてくるご機嫌なナンバーである。終曲はまた、バラード調に戻り、ドラマチックに終わって行く。

セイヴ・ミー – Save Me(ブライアン・メイ)

1980年リリースのアルバム『ザ・ゲーム』に収録され、また、シングル・カットされた大変ドラマチックなナンバーである。

リード・ヴォーカルのフレディのピアノの弾き語りで静かに始まるこの曲は、ブライアンならではの美しい旋律のリリカルさが心に染み入るナンバーでもある。大変ドラマチックといったが、それもフレディのヴォーカルだから成立するのであって、他のヴォーカリストではこうまで心に染み入ることはないだろう。

また、ブライアンの生ギターがとても味わい深い。

愛という名の欲望 – Crazy Little Thing Called Love(フレディ・マーキュリー)

1979年にまず、シングル曲としてリリースされ、翌1980年にリリースされたアルバム『ザ・ゲーム』に収録されたナンバーである。

このナンバーはエルヴィス・プレスリーに捧げられたナンバーで、フレディのヴォーカルもプレスリーを模したとても格好いい小気味よい歌声を聴かせている。かのジョン・レノンも触発を受けたナンバーで、古き良き時代のロックンロールの香り気高い聴き応え十分のナンバーである。

愛にすべてを – Somebody to Love(フレディ・マーキュリー)

1976年にジングル曲としてリリースされ、その後、翌1977年リリースのアルバム『華麗なるレース』に収録されたナンバーである。

オーヴァー・ダヴィングされた分厚くも美しいコーラスを大いに駆使して、黒人霊歌のような雰囲気を醸し出しながら、フレディのファルセットなど、様々なヴォーカル・テクニックを織り交ぜ、聴くものの心と共鳴して止まない心に残る魂の歌が聴ける。

ナウ・アイム・ヒア – Now I’m Here(ブライアン・メイ)

1974年リリースのアルバム『シアー・ハート・アタック』に収録されたナンバーで、翌1975年にはシングル・カットされてもいる。

ブライアンらしく、ギター・サウンドを基軸にしたハード・ロック・ナンバーで、ドライヴ感あふれる演奏が楽しめる。それにしてもこのナンバーではブライアンのハードなギター演奏に痺れること間違いなしである。それほどブライアンのギター演奏は秀逸なのである。

懐かしのラヴァー・ボーイ – Good Old-Fashioned Lover Boy(フレディ・マーキュリー)

1976年リリースのアルバム『華麗なるレース』に収録され、翌1977年にリリースされたEP盤『Queen’s First E. P.』に収録されてもいるナンバーだ。

フレディのピアノの弾き語りで訥々と歌われることで始まるこのナンバーは、とても美しいコーラスが印象的なナンバーで、また、フレディのヴォーカルの何気ない歌いぶりがとても小気味よくノスタルジーを誘うようなメロディも味わい深い心に染み入るナンバーである。

プレイ・ザ・ゲーム – Play the Game(フレディ・マーキュリー)

1980年にシングル曲としてリリースされ、また、同年リリースのアルバム『ザ・ゲーム』に収録されたナンバーである。

フレディの静寂を切り裂く鮮烈なシンセサイザーの演奏で始まるこのナンバーは、しかしながら、フレディのピアノの弾き語りが始まるととても穏やかな曲調のバラード・ナンバーとなり、フレディが滋味深くも表情豊かな感動のヴォーカルで熱唱している。

また、効果的なシンセサイザーとブライアンの華麗なギターは聴きもので、それに極上のコーラスが花を添えている。

フラッシュのテーマ – Flash’s Theme(ブライアン・メイ)

マイク・ホッジス監督の映画「フラッシュ・ゴードン」のテーマ曲で、ブライアンの手になる1980年リリースの楽曲である。

映画「フラッシュ・ゴードン」のサントラをクイーンが手がけていて、このテーマ曲にはアルパム収録ヴァージョンとシングル・ヴァージョンがあり、『グレイテスト・ヒッツ』に収録されているのはシングル・ヴァージョンである。

ピアノとベースの打撃音的なビートが緊迫感を醸成し、そこに鮮烈にも美しいコーラスでの「Flash, Ah, Ah」と始まるこのテーマ曲には映画のセリフが織り交ぜられていて、ピンと張り詰めた空気感がこの映画の内容を暗示させるが、一カ所、フレディがピアノの弾き語りで美しく歌うところがあり、それがこの映画のハッピーエンドを暗示させるのだ。

輝ける7つの海 – Seven Seas of Rhye(フレディ・マーキュリー)

1974年にリリースされたアルバム『クイーンⅡ』に収録され、同年シングル・カットされてスマッシュ・ヒットしたナンバーだ。タイトル等に出てくるRhyeはフレディが子どもの頃に夢想したファンタジー世界の名前のことで、つまり、この楽曲はフレディの想像した世界のことを歌ったものである。

このナンバーのチェンバロを彷彿とさせるようなピアノの華麗なアルペジオ奏法が印象的な曲の出だしは、有名である。ブライアンのズドンとしたギターが唸り、そして、フレディの勇壮な歌声が響き渡る。エフェクトも駆使しながら、この世ならぬファンタジー世界を凝りに凝った音作りで織り上げている。

ウィ・ウィル・ロック・ユー – We Will Rock You(ブライアン・メイ)

誰もが一度は耳にしたことがあるクイーンを代表する名曲中の名曲である。1977年リリースのアルバム『世界に捧ぐ』の先行シングルである。

余りに有名な足踏みと手拍子で「ドンドンチャ」というリズムを生み出し、そのリズムに自在に乗るフレディのヴォーカルも力強く、そして、「ウィーン」の唸り出すブライアンのギターが冴え渡る、一度聴いたなら忘れることができないナンバーだ。

伝説のチャンピオン – We are the Champions(フレディ・マーキュリー)

このナンバーも誰もが一度は耳にしたことがあるクイーンを代表する名曲中の名曲だ。歌詞の内容は言うなれば、SMAPの「世界に一つだけの花」と同じような意味があり、誰もがチャンピオンと歌っている。リリースは1977年で、前曲の「ウィ・ウィル・ロック・ユー」と両A面としてアルバム『世界に捧ぐ』の先行シングル曲である。

フレディのピアノの弾き語りで切々と歌い上げながら次第に盛り上がって行き、クイーンならではの美麗なコーラスで転調、サビの部分をフレディによってドラマチックに歌い上げられて行く。大変劇的変化に富み、心に染み入る名曲である。

まとめ

このベストアルバム『グレイテスト・ヒッツ』に収録されているナンバーの数々は、クイーンの初期の黄金期を代表する名曲の数々である。

いまも、テレビのBGMやCMで使用されるなど、どのナンバーも全く古びることはない。むしろ、とても新鮮なのだ。それは、クイーンというバンドの歩みがどのバンドも歩んだことがない未踏の道を歩き切り拓いたその足跡に外ならず、クイーンの後を歩んだバンドは未だ現れていない。

それ程に、クイーンが生み出した音楽は斬新で、そして、一度聴いたら忘れられないとても印象に残るナンバーばかりなのだ。特に1曲目の「ボヘミアン・ラプソディ」はロック史に残る名曲中の名曲で、当時も革命的であったが、今聴いても前衛的で革命的な珠玉のナンバーである。

ライター:積緋露雪

1964年生まれ。栃木県在住。自費出版で小説『審問官』シリーズを第三章まで出版。普段はフリーのライターとして活動中。嘗ての角川書店の音楽雑誌「CDで~た」の執筆・編集・企画を担当という経歴の持ち主。

※この記事は、以前筆者が運営していた音楽サイト「バンド部ねっと」から移行した記事となります。