アルバム紹介・解説|クイーンの2nd『Queen II』は1stで酷評した批評家に対する意趣返しの初のコンセプト・アルバム!

音楽レビュー
クイーン2nd「Queen II」ジャケット

クイーンのデビュー・アルバム『戦慄の王女/QUEEN』は地元英国の批評家から酷評を受けたが、それに対する回答としてクイーンはプログレッシヴ・ロックのアルバムのようなコンセプト・アルバムで痛烈爽快な反撃ののろしを上げた。

2ndアルバム『クイーンⅡ』は1974年3月に英国でリリースされたが、当時はまだ、CDがなかったのでレコードとしてA面とB面に分かれて聴かざるを得なかった。

そこで、クイーンはA面をギターのブライアン・メイを中心とした作品を集めた「サイドホワイト」、B面をヴォーカル兼ピアノのフレディ・マーキュリーの作品で形作られた「サイドブラック」として構成されたコンセプト・アルバムを作り上げたのだ。

酷評された1st『戦慄の王女』であったが、よくよく聴くと、それは既にクイーン・サウンドの土台はできあがっていて、今振り返ると当時としては画期的なアルバムと言える。

そのしっかりとした土台があるクイーンがアルバムにトータル性を持たせたコンセプト・アルバムを発表したのだから、それは傑作アルバムでないはずがない。

Queen – Queen II|各曲解説

アルバム基本情報

リリース日時 1974年3月8日(英国)
ジャンル ハードロック
収録時間 40分42秒
レーベル EMI

■White Side

プロセッション – Procession(ブライアン・メイ)

心臓の鼓動を思わせるドラムの音でこのアルバムは幕を開ける。2ndアルバムが胎動を始めたのである。1分半弱の短い曲だが、当然ながら、ブライアン・メイのギターが鮮烈な光を放っている。

父より子へ – Father to Son(ブライアン・メイ)

大作だ。ギターのブライアン・メイの手になるこの作品は、ブライアン・メイがその持てるギター・テクニックを全て出し切っての、それでいて楽曲の構成は非常に緻密に練られていて、唯単にブライアン・メイのギター・テクニックをこれ見よがしに見せつけるものではなく、聴き所満載のドラマチックな楽曲に仕上がっている。

コンポーザーとしてのブライアン・メイの面目躍如たる才気煥発なこの楽曲が第2曲目というのがこのアルバムの凄さを物語っており、この「父より子へ」はクイーンのロック・バンドとしての凄みがよく現れている楽曲だ。

ホワイト・クイーン – White Queen(As It Began)(ブライアン・メイ)

「ホワイトサイド」を象徴する秀作だ。ブライアン・メイの手になるこの非常にドラマチックなこの楽曲をフレディ・マーキュリーは情感たっぷりに歌い上げている。途中にインドの民族楽器、シタールも取り入れながら、ドラマチックな中に神秘的に雰囲気を加えて作品に深みを与えている。

そうした凝った作りのこの楽曲をフレディ・マーキュリーはとても説得力のある歌いぶりで聴くものを魅了してやまない。ともかく、この2ndアルバム『クイーンⅡ』は4人のメンバーの鬼気迫る気迫がみなぎっていて、隙がないのだ。

サム・デイ・ワン・デイ – Some Day One Day(ブライアン・メイ)

ブライアン・メイの手になるこの楽曲で、ブライアン・メイがメイン・ヴォーカルを務めている。曲調は英国のトラディショナルなフォーク・ミュージックの香り高いどこか哀調のある楽曲で、それをブライアン・メイは才能豊かなところを見せつけるように見事に歌い上げている。

ブライアン・メイのヴォーカルはフレディ・マーキュリーのような派手で華やかなところは少ないのだが、そのけれん味のないそのヴォーカルは聴くものの心にとても響く魅力があり、聴き応えたっぷりだ。

ルーザー・イン・ジ・エンド – Loser in the End(ロジャー・テイラー)

ロジャー・テイラーの手になるこの楽曲は、ロジャー・テイラーがメイン・ヴォーカルを務めている。「サイドホワイト」を最後を飾る作品だ。

ロジャー・テイラーのドラミングが冴え渡ったこのロック・ナンバーは、ブライアン・メイやフレディ・マーキュリーの作品とはひと味もふた味も違う、芯の強い、ある意味では野太いロック・ナンバーで、「サイドホワイト」の最後を飾るに相応しい楽曲と言える。

■Black Side

オウガ・バトル – Ogre Battle(フレディ・マーキュリー)

この作品でそれまでの雰囲気が一気に変わる。この楽曲のイントロがエンディング部分を逆再生したというのは有名だが、そのせいもあってか、この作品のイントロでフレディ・マーキュリーの世界へと聴くものは引き込まれるのだ。

クイーンは4人のメンバーがそれぞれ才能豊かで個性的なのだが、やはり、フレディ・マーキュリーは別格といえる。フレディ・マーキュリーの曲作りはロックの枠に当てはなまらない自在感があり、様々な音楽的な要素がその楽曲に垣間見える。それだけ、フレディ・マーキュリーの楽曲は複雑なのだ。

ファリー・フェラーの神技 – The Fairy Feller’s Master – Stroke(フレディ・マーキュリー)

フレディ・マーキュリーのほとばしる才能が凝縮した一曲。奇をてらっているわけではないのであるが、フレディ・マーキュリーの止めどない才能が溢れ出て、楽曲を複雑怪奇というか、どちらかというと演劇の台詞回しやオペラの要素がふんだんに盛り込まれた表情をくるくると変える作品となっている。

めまぐるしく表情を変えるので、聴くものは楽曲についていくのに精一杯かというと、そんなことは全くなく、ただ、フレディ・マーキュリーの才能に感嘆するばかりなのである。

この楽曲は細密画で知られているリチャード・ダッドの同名の絵画をフレディ・マーキュリーが実際に見て非常に感銘を受けてできた曲といわれている。

ネヴァー・モア – Nevermore(フレディ・マーキュリー)

1分少々の短い楽曲だが、ピアノが美しいバラード曲となっていて、フレディ・マーキュリーの表情豊かな歌いぶりに聴き惚れる作品となっている。

マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン – March of the Black Queen(フレディ・マーキュリー)

「サイドブラック」を代表する楽曲といえる大作だ。この楽曲もまた、稀代の才能、フレディ・マーキュリーのどうしようもなくあふれ出てしまうアイデア満載の複雑な組曲のような一曲で、表情をめまぐるしく変える作品に仕上がっている。

初め、静かなピアノで始まるこの作品は、しかし、すぐに演劇の台詞回しやオペラの要素がふんだんに盛り込まれたフレディ・マーキュリー独特の音楽世界が広がる、複雑な構成ながらもクイーンでしか作り出せない音作りが鮮烈な楽曲となっている。とにかくメリハリの効いた、まるでジェットコースターに乗っているような起伏の激しい秀作だ。

ファニー・ハウ・ラヴ・イズ – Funny How Love is(フレディ・マーキュリー)

前曲からメドレー形式で始まるこの楽曲もまた、フレディ・マーキュリーならではの味付けがなされていて、一筋縄ではいかない。とはいえ、アコースティック・ギターでの演奏が印象的なこの作品は、フレディ・マーキュリーとしてはシンプルな部類の楽曲である。

しかし、よく伸びる美しいフレディ・マーキュリーの歌声で歌い上げられるこのバラード調の楽曲は、コーラスとのコール・アンド・レスポンスが実に耳に心地よいクイーンでしか作り上げられない作品となっている。

輝ける7つの海 – Seven Seas of Rhye(フレディ・マーキュリー)

シングルカットされた一曲だ。これまた、非常に凝った構成の楽曲でフレディ・マーキュリーの面目躍如といった作品である。フレディ・マーキュリーのピアノとブライアン・メイのギターが絶妙に絡み合いながら、このコンセプト・アルバムの終幕へと向かってゆく。

最後は、相変わらず美しいコーラスとフレディ・マーキュリーの美麗な歌声がクイーン独特のサウンドを形作る中、遊び心からなのか、デモ・テープでのリハーサルのような終わり方が、とても印象的なのである。

まとめ

この『クイーンⅡ』は、デビュー・アルバムを英国の批評家に酷評されたクイーンの、その批評家達に突き付けた気迫に満ちた一作なのである。

「サイドホワイト」と「サイドブラック」というコンセプトに基づいて作られたこのアルバムは、「サイドホワイト」をブライアン・メイの楽曲を中心とした作りで、と「サイドブラック」はフレディ・マーキュリーの楽曲で構成されている。

「サイドホワイト」と「サイドブラック」を聴けば、ブライアン・メイとロジャー・テイラー、そしてフレディ・マーキュリーの個性ははっきりと分かり、各人各様のその才能豊かな楽曲が一分の隙もなく収められている。

中でもフレディ・マーキュリーの才能は別格といえ、『クイーンⅡ』では強烈な光を放っている。

ライター:積緋露雪

1964年生まれ。栃木県在住。自費出版で小説『審問官』シリーズを第三章まで出版。普段はフリーのライターとして活動中。嘗ての角川書店の音楽雑誌「CDで~た」の執筆・編集・企画を担当という経歴の持ち主。

※この記事は、以前筆者が運営していた音楽サイト「バンド部ねっと」から移行した記事となります。